第11話・・・死を無駄にするな(神戸における震災との死闘)
この現場はJR六甲道駅と国道2号線の間に位置し、被害が大きかった地域の中にある。
鉄筋コンクリート造り4階建ての2階部分から上が北側に倒壊し、隣接する木造の民家を下敷きにしていた。
震災から1週間、それまで作業を続けていた隊と現場交替して救出活動に入った。
いざ作業に取り掛かるにしても相手は鉄筋コンクリートのピル。至る所で鉄柱が突き出し、何時倒れてくるか分からない
コンクリートの壁。足場も悪く、一つ間違えれば我々自身も生き埋めになるかも知れない。そんな危険な状況の中、付近住民から
得た情報をもとに他都市の救助隊と共に救出を急いだ。
重機による解体が始まり、少し撤去しては確認する作業が続く。しばらくして2階と思われる床が発見され、そこからは手作業と
なった。折れた角材、潰れた家具など色々なものを搬出する中、布団が発見された。
「もしかしたら・・・」の願いも虚しく、その間から紫色に変わり果てた手が苦しさを訴えるかのように突き出ていた。
作業は一層慎重に行われる。
無惨にも家人の上にはタンスがのしかかり、さらにその上からビルの鉄骨が押さえ付けている。タンスの撤去を試みるが、それが
原因でビルが崩れるのではないだろうか。様々な不安がよぎる中、重機を操る作業員からアドバイスをもらいながら作業を続け、
収容した。
身内を心配し、遠方からやっとのことで到着した人たち。
できることなら避難所での再会を望んでいたはずだ。息絶えた家族を乗せて去っていく車。我々の作業は続いた。
この現場は2日間にわたる長期戦だった。救助人員6名、すべて死亡救出だった。できることなら無事故出したかった。紙一重で
生さ残った我々は、この地震で亡くなられた方々の死を無駄にしてはならない。
(灘消防署)安部 吉師消防広報誌「雪」から転載